2010年6月24日木曜日

トゥルー・ロマンス/TRUE ROMANCE


TRUE ROMANCE/トゥルー・ロマンス

『TRUE ROMANCE/トゥルー・ロマンス』はは1993年のアメリカ映画。

『TRUE ROMANCE/トゥルー・ロマンス』が、そのバイオレンス・シーンの激しさにもかかわらず、若い女性の心をとらえて離さないのは、その内側の心の無垢さ。

エルヴィスとカンフーしか頭にないような彼と、彼と彼への愛しか持っていない女の子。
。評価のしょうもないほど、 外側の力はほぼ皆無に等しい。それでも、ピカピカの愛を持っている。

世間のみんなが冷たい視線しか投げかけなくても、満面の笑みで「世界一素敵な奴」だと言ってくれる彼。「世界一素敵な奴」だと言って喜んでいた息子を守るために、わざと犯罪組織に悪態をつき星になる父。

目を覆いたくなるような、痛々しい彼女への暴力シーンに、女の子たちは泣く。それほどまで彼のために生きようとする姿勢に泣く。血まみれの彼女を抱き寄せ、オレのためにと謝りながら疾走する姿に愛の素敵を見る。住むところさえない二人にあるのは指輪とタトゥと愛をまとった身体だけ。愛一杯にして身体だけで生きる姿勢が永遠のラブ・ムービーとして光るアラバマとクラレンスの物語。

汗が涙に見える男、エルヴィスは彼に言う。
「おまえには負けたぜ。クラレンス」「最高にクールだ。」
「俺はおまえが好きだった。これからもずっとな。」彼にはそう聞こえる。キングに存在を肯定されることで彼は永遠に戦える。

世界一の女の子を守るために戦う彼に、キングはキングと呼ばれるのがふさわしい。彼にいばらの道を乗り越える勇気を与え、奇跡をもたらし、真実の愛を守るために、キングはその任務を全うする。二人の息子にエルビスと名付けられるまで。

そう言えばキングも歌と懐かしい愛と痛んだ愛しか持っていなかったような気がする。

除隊後、グレイスランドの一角にある小さなオフィス。取材陣に初めてプリシラのことをインタビューされたエルヴィスには、少年のような笑顔がこぼれていた。隠せない表情は、クラレンス(クリスチャン・スレーター)が父(デニス・ホッパー)に見せた表情と重なる。


エルヴィス・プレスリーが他界後に制作されたエルヴィス絡みの作品『スコーピオン』は劇画タッチの超激写、ブラックユーモアな味つけがユニークだった。中年男が集まって破れかぶれの青春リターン・マッチを繰り広げる。『サッチ・ア・ナイト』が頭から離れなくなる。

一方『トゥルー・ロマンス』は青春真只中を爆走する。蹴っ飛ばされ、転がって、走って、こけて、痛みも切なさも、それゆえロカビリーだ。

”監獄ロックこそロカビリー
彼はロカビリーの神だった
タフでツッぱっていて無礼
あの映画の彼はロックを歌いまくって
太く短く生きて散っていく
おれの理想のカッコいい男だ
エルビスは最高さ
おれはおカマじゃないが
エルビスは女より美しかった”

しみじみセリフは、飾りじゃない。ツッぱり野郎の宣戦布告が全編を支配して熱い。
テネシー州のノックスビル生まれのロサンゼルス育ち、エルヴィス・ロカビリー大好き人間クェンティン・タランティーノの脚本、アップルコンピュータのCMや『トップガン』『エネミー・オブ・アメリカ』『スパイ・ゲーム』の映像作家トニー・スコット監督の強力タッグを組んだ。クェンティン・タランティーノは自分で監督したかったそうだが、資金がないので脚本を売ったそうだ。

クリスチャン・スレーター(クラレンス)パトリシア・アークエット(アラバマ)を主演にブラッド・ピット、ゲーリー・オールドマン、デニス・ホッパー、サミュエル・L・ジャクソン、クリストファー・ウォーケン、いまならオールスターというキャストで制作されたカルトな傑作。エルヴィス(エルビス)役をなんとバル・キルマーが!


アラバマとクラレンスが身につけていた馬蹄形の結婚指輪はエルヴィスが1956年、<ハウンド・ドッグ>録音時にしていた指輪。

『トゥルー・ロマンス』を心のバイブルにする女性たちに、エルヴィス復活の名盤「フロム・メンフィス」に収録されていた愛のバラード<恋はいばらの道を>を----。

<恋はいばらの道を>は『トゥルー・ロマンス』とは無関係だが、これは紛れもなくアラバマとクラレンスの物語。-----そしてエルヴィスが淡い夢を描いた遠いサマー・ディスの歌。

彼女たちの心がいつか癒され、幸福な人生を手にすることを祈って。