2011年5月17日火曜日

エルヴィス・プレスリーと才能


エルヴィス・プレスリーと才能

「才能」という言葉ほど、その意味を誤解されやすい言葉も珍しいと思います。

大事を成し遂げた人を見ると、「あの人は才能に恵まれているから」のひと言で片づけてしまう人が沢山います。しかし、これは間違いです。
才能だけで成功できるのなら、「才能があるのに、パッとしない人」が溢れているのはなぜか。

そこです。

エルヴィス・プレスリーは、その声と歌唱力でキング・オブ。ロックンロールに登りつめた人です。
ビートルズ他をはじめ沢山のフォロワーを生みました。そんな彼でさえデビュー時には、「君には才能がない。歌手をやめた方がいい、」とベテラン歌手からたしなめられました。

ベストセラー「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」で再ブームが起こっている現代経営学の父、ピーター・ドラッカーは、「何事かを成し遂げる能力と知性、想像力、知識などとの間に相関関係はほとんどない」と語っています。

さらに「知性や想像力、知識は重要な資源ではあるが、それだけで結果を出すことはできない。そうした資源だけでは、どんな可能性も頭打ちになってしまうのだ。才能だけで勝負が決まるなら、人一倍有能で、影響力のある人は、みな生まれた時
から、天才の名をほしいままにしていたはずだ。しかし、現実は必ずしもそうではない。」と話しています。

では、美人でスタイルがいいのに、モデルとして成功しないのはどうしてでしょう?
誰でも必ず「得意なこと」がありますが、得意なことが伸ばせないのはどうしてでしょう。

そこに潜んでいるのが「ライフスキル」です。自己肯定感が乏しいと長所も見逃してしまう。あるいは気がついていても気後れする。自分の強みを生かせないのは、生かす努力ができないからです。
つまり時間を使わない。時間を無駄に使ってしまうのは、魔術にかかったように自分の人生を違う方向を向かわせているからです。

自己否定感が強いと、ネガティブなコミュニケーションが多くなります。と、いうかほとんどがそうです。何でもないことにも、言葉の節々にネガティブな言葉が走るのです。

恋にのぼせるにしても、得意なことに挑戦するにしても、大事なことがひとつあります。

それは自分が「どういう人聞になるか」ということです。
その上で「なれる最高の自分になる」ことをめざすことです。

人生は自分でコントロールできません。
でも、どんなときにも、「なれる最高の自分になる」意志があれば、困難は克服できます。

才能とはライフスキルの上に培った得意なことです。

2011年3月21日月曜日

ロック史上最大の悲劇


3つの契約、ロック史上最大の悲劇

1955年、エルヴィス・プレスリーの才能に惹かれたトム・パーカー大佐はRCA、CBSコロムビア、アトランティックの3社とサンからの移籍の交渉をした。それは自身がマネジャーになるための手順でもあった。契約金2万ドルがパーカー大佐のボーダーラインだった。
最終的にRCAと2万5千ドルで契約。しかしエルヴィスの感激は、同時にロック史上最大の悲劇と呼ばれること表裏一体だった。

パーカー大佐がRCAと契約と同時にヒル&レインジ出版という音楽出版社との契約を交わしてしまったことで、エルヴィスはこの出版社の管理している曲か、この出版社の抱える作家の曲しか歌えなくなってしまう。エルヴィス・プレスリー出版社も設立されるが事実上このヒル&レインジ出版という音楽出版社の専属アーティストということだ。それ以外の曲を歌おうとする場合、楽曲を提供した作家たちは著作権料の一部をこの出版社に支払うことを要求されることになる。これはヒル&レインジ出版に属さない売れっ子作家には自分の取り分をピンハネされるのと同じ状態を意味する。

これによって徐々にエルヴィスには質のよい作品が提供されなくなってしまい、それはエルヴィスの才能を凍結することになってしまった。それはロックンロールの発展の凍結を意味した。ロックンロール史上最大の悲劇と呼ばれる由縁だ。

この著作権料の問題は<ハウンドドッグ><監獄ロック><ラヴィング・ユー><やさしくしてね>などのリーバー&ストウラーや<恋にしびれて><冷たくしないで><心の届かぬラヴレター>のブラックウェルのような素晴らしい楽曲を作れる人に対しても同じく適用された。
エルヴィスがこの事実を知ったとき、エルヴィスは愕然とし、優秀な作家たちにそんな要求をするのは中止しろと言ったという。

エルヴィス・プレスリーが絶頂期の場合は著作権料を分け合ってもメリットも大きいものであったにしても、ビートルズが全米を席巻した後、本来ならより素晴らしい楽曲を獲得することが必要であったにもかかわらず、逆に急速に悪化したのは、売り上げが低下する分、さらにコストダウンを求めて売れない作家のものを歌わせたのが原因だろう。ビートルズやストーンズらが人気を呼んでいても、エルヴィスはやはりアメリカの大スターであってエルヴィスであれば売れるという現象は続いた。その喜ぶべきことが、悲劇的だった。才能はより封印され、エルヴィスのキャリアに大きな傷跡を残した。

もうひとつが映画会社との長期契約。ここにも同じような原理が働いた。マネジャー、トム・パーカー大佐のこれまた光と影である。



エルヴィス・プレスリーの光と影を語った書物や情報がたくさんあるなかで、ひどい中傷に満ちたものも多い。その原因を作っているのは実はエルヴィス本人の問題というより環境が原因のものだと言える。

エルヴィス以前にエルヴィスはない。それはこれだけのスターをどう処遇すればいいのかというモデルがないという意味だ。
エルヴィスの周辺に集まった誰が、ロックンロールのような風変わりな音楽が脈々と続くことを予測しただろうか?
エルヴィスは自分の環境が作られていた時、この世界のことは何も知らなかった段階にあった。それを弱冠21歳の田舎からやってきた青年に考えろと言っても酷な話ではないか。

一体誰がそんな計算ができるというのだ。ましてエルヴィスはアーティストであってビジネスマンではない。会社勤めのサラリーの計算は出来ても、アルバイトで稼ぐ金の計算は出来ても、スーパースターの計算は出来なかったし、なによりこの時点で自分が世紀のスーパースターになれると想像もしなかっただろう。

おかげでエルヴィス・プレスリー以降に登場したヒーローたちはエルヴィス・プレスリーの光と影をモデルとして考えることが可能になった。